感情、言葉、表現

 

 

数年前ネット上で創作活動(とは呼べないような取るに足らないもの)をしていたとき、その中のとあるコミュニティで出会ったMさん(仮称)の書く文章にとても惹かれた。

Mさんは「好き」という感情を「好き」やそれに類似した言葉を使うことなく表現するのがとても上手だった。「好き」「大好き」「愛してる」という言葉に収められるものから超越するような、そんな感情を言葉を使って表現していた。どんなに小さな感情の起伏や流れもひとつも取りこぼすことなく細やかに表現していた。その感情に、ありふれた言葉がついてくる。

きっと本来、人の心の動き方や考え方はそういう仕組みなんだと思う。「好き」という言葉だけがひとりで歩き始めるわけじゃない。どこからとも分からない場所から生まれて溢れてくる脆くて繊細な感情に、「好き」という言葉を当てはめている。頭の中で無意識にそういう作業をしている。

「好き」というひとつの言葉に変換される前のぼんやりとした感覚や感じる温度のようなものを言語化するのは至難の業であり、そもそもそれを感知すること自体が難しい。

「好き」という概念がこの世から消え去ったら、本来なら「好き」と表す感情はどんな言葉で置き換えられるんだろう。きっとそれはそこに100人いれば100通りあると思う。

エヴァンゲリヲン新劇場版「破」での綾波レイの台詞「碇くんと一緒にいるとポカポカする。私も碇くんにポカポカしてほしい。」

これは、まさにそのもの。素敵だね。